留守(2003/12/11)

 「ん、あれ柴田君は?あー…今日もいつもの遅刻かな?」
 「またかよ。減給だよ減給。その分迷惑料で俺に流そうよ、一時間につき一万円、月で考えたら…あいつ給料無いね」
 「いや、幾らなんでもそれは…」
 「マジに取んないでよ、冗談、冗談だから」
 「…真山さんが言うといちいち冗談に聞こえないんですわ」
 「何か言ったー京大ー」
 「は、いや、あっつ!ぎゃあっつあ!なにさらすんですかっ!火い点いたタバコ、投げんといて下さいよ!あっがー髪、髪が、わしの前髪ー!」
 「ああ、行っちゃった…どうするんだろう、しょ、消火?」
 「燃えてろ一生」
 「ひどい…あ、いえいえ…」
 「さっきから何寝ぼけた事言うてんのよ、今日から一週間研修ーて、昨日柴田が自分で言うてたやん黒板書いて朝礼で」
 「えっホント?」
 「確か昨日そんな事を、確かに仰ってましたね」
 「あー寂しい、やっぱここはあの子があらんとな。なあ真山さ」 
 「やった最高」
 「…っかー、何それ、そら幾らなんでもないんちゃう」
 「何でよ、みんなだってそう思ってるでしょ」
 「え…?いやいや、ねえ、そんな、柴田参事官のご息女にそんな失礼な」
 「期限付きだけど面倒な事件持ってきて元上司の責任問われるような事も無いし」
 「え、いやはは、その、ねえ」
 「期限付きだけど定時間際に事務処理の仕事持ってきてダンスの講習に遅れる事も無い」
 「あ、その僕は…」
 「期限関係なく居ようが居まい合コンにも支障はねえし」
 「………」
 「何よ、その目」
 「…いいえーさすが真山さん、もっともやなあって思っただけ。まあな、そらー合コンには支障ないはな?ご・う・コ・ン・に・は!」
 「あん?」
 「いーえ?べっつに?なんっでも?」
 「…撃つよ?」


 ―後日。
 
 「…何してんの」
 「あー真山さん、お久しぶりです。柴田純、只今戻りました。真山さんはまだお帰りになってなかったんですね、寝てるのでちょっと、ビックリしました、今六時ですよ?」
 「何これ、板?」
 「え?お土産です。試食したんですけど美味しいですよ乾燥イモ、名物なんだそうです」
 「ふーん」
 「あ、別のものが宜しかったですか?あとは絵葉書とー記念に押してきたスタンプとー」
 「いらね、食い物で良い」
 「そうですか?じゃあこれで…紐が絡まってる、ハサミハサミ」
 「ほら」
 「ありがとうございます。えーあれっ桃太郎さん用の駅前あらしわ商店街の八百屋さんで買った桃は…あれ、あれ?」
 「下下」
 「あー何でこんな所に落ちちゃったんだろう。ふーっふーっちょっと汚れちゃったけど、洗えば大丈夫かな、皮むくし、うん、大丈夫」
 「………」
 「彩さんは温泉タマゴかな、何か、ミネラルでお肌に良いみたいだし。…ああ、だからタマゴ肌?」
 「………」
 「近藤さんは大家族だからみんなで食べれられる温泉饅頭が良いかな。元係長は何だか腰が痛いって言ってたし、うん、温泉のもとにしよう」
 「………」
 「わーこの私の机の上のって、全部捜査資料ですかー。あ、判子押さなきゃならないのもこんなに…でも、近藤さんがまとめておいてくれたんだ、良かったーやっぱりお饅頭だけじゃなくて絵葉書もあげようっと」
 「………」
 「館内全館喫煙への移行とその実施要綱、対置き引きひったくり警察庁基本方針第十二回改定、既知業務の徹底管理再度通告のお願い、1978年新宿婦女暴行事件」
 「………」
 「サインと判子か。えーしばた、じゅ、ん。えー判子、判子は…あーあった、よっと。…あ、上下反対、あれっ丸の中から」
 「合コンにはね」
 「はみ出て、…え、何ですか?ごう?」
 「いーえ、別に、何でも」
 「…何笑ってるんですか?」 

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