連絡(2003/9/17)

 『もしもし?あーえー警視庁捜査一課弐係、お願いしたいんですけど』
 「あい、弐係はココ」
 『あ、もしかして彩さんですか?』
 「って…柴田?アンタ、どこから電話してんのよ、今どこ」
 『えーと、…一身上の理由により秘密です。あのですね、私の警察手帳と地図と捜査資料って、机に置いてありますか?』
 「一身上て…。何、アンタ何か忘れたん?えーっと…うわ何コレ、そのいけてへんカバンに何持っていったのよアンタ?諸々全部残ってるやん」
 『あ、やっぱり。…困ったな、ここから戻ってまた弐係まで行ったら事件現場のビルが閉まっちゃうし…』
 「何、今どこ」
 『ですから、…一身上の事情がありまして』
 「だーから、一身上って、…あっ、ちょ!」
 『あれ彩さん?彩さーん?彩さん彩さん彩さん彩さー』
 「うるせえよ、鼓膜破れる!」
 『あ、え、真山さん。あれ、彩さんは』
 「ちょちょ、いきなり何するんよ真山さん。心配せんでも柴田は無事に一人でちゃんと捜査を」
 「んな事どうでもいい。オイ柴田、お前間違って俺の正露丸持ってったろ!?あと新聞とムヒと耳かきと干しといた靴下」
 『え?そんなはずないじゃ………あ』
 「あ。じゃねえよ、お前ふざけんな、ふざけんなよ!何してんの?ねえ。虫に食われたよ、すっげー腫れてんだけど」
 『…そんなの近くの薬局に行けばいいのに』
 「あ、お前電話だと思って生意気。ね、ムカつく、ムカつく!生意気なんだよ。お前戻ってきてさっさと正露丸とムヒ返せよ、俺が死んだらどうしてくれんだよ」
 『そんなに元気なのにどうやって死ぬんですか、大丈夫です、真山さんは死にませーん』 
 「あ、クソ、お前今ちょっと見下し気味だったな?お前どこだよ、どこにいんだよ!チクショー行って殴ってやる…木戸、柴田どこにいるって?」
 「何や知らんけどイッシンジョーの理由とかで、どうにも教えられへんのやて」
 「…一身上?」
 『真山さん』
 「……何」 
 『金魚に餌、あげときましたよ』
 「…一身上だあ…?」
 『ついでに燃えるゴミと燃えないゴミ、分けてみました』 
 「柴田、柴田…し、お前、な、何…な、なん、お前、何でだよ、何で俺ん家いんだよ!何?何か水槽のモーター音とか聞こえるね、ね?ど、ドロボー!け、けいさ、警察…」
 『すみません、携帯の電源が切れまして、充電する場所をお借りしようと』
 「公衆電話は」
 『お財布も、机に忘れてきちゃったみたいなんです』
 「何で携帯の充電器入れてて財布忘れんの?んで何で俺ん家なの、ねえ?」
 『近くまで来たものですから、つい』
 「ついとか言うな」
 『ですから、近くの駅まで彩さんにお願いして荷物を持ってきて頂きまして、それで何も言わずここからそっと何事も無かったように去ろうかと』
 「なお悪ィよ」
 ―ピンポーン。
 「……ピンポン?」
 『あ、ハイーどちらさまですかー』
 「ちょっと!何勝手に出てんだよ!?ねえ、柴田!柴田!?」
 『え?奥さん?いやだーそんなんじゃありませんよ、私の旦那様は真山さんじゃありません』
 「オイ、オイオイオイ、オイー何話してんの、ねえー?」
 『エヘー、え?お鍋?…幸せの?へえーこんなものがあるんですか、なるほど…』
 「鍋…?」
 『え、え、これで幸せになれる?風水よりも効果的?呪い返し?…五十万円、なるほど』
 「五…、柴田?柴田、買うなよ?ハンコ押すなよ?持ち前の推理力とか発揮して見つけちゃうなよ?」
 『うーん、五十万…考えちゃいますねー』
 「考えんな、考えんなよ!柴田ー柴田純ー純ちゃーん、オイー」
 『ええと…うーん、でもですね、幸せはこういう事では無い気もしますし、やっぱり五十万円は少々お高いかと』
 「良し、良しいいぞ良し!うちにはホーロー鍋があんだよ、ホーローでいいんだよホーローで」
 『…え?幸福の植木?』
 「木戸、電話持て」
 「え」
 「待遇、俺今から有給です、柴田のと振り替えて下さい」
 「え? し、柴田くんの分の有給を君に振り替えるってそんな無茶苦茶な」
 「ぶっ飛ばす」
 「ちょ、真山君!?真山くーん!」


 「今度こそ東大ちゃん、殴られるぐらいじゃ済まされないんやないでしょか」
 「東京湾。いや、三笠湾かも知れません」
 「ああーそんな事になったらどちらのご尊父にも申し訳が立たない!ど、どうしよう、まずいよー!」
 「んな心配せんでも大丈夫やて、何やかんや言うても柴田が心配なだけ」
 「…そないなふうには全く見えへんかったけど」
 「ですよねえ、いくらなんでも、鍋や植木でそんな。…ああ、相模湾?」
 「そうだよ〜そんな事言ってるの木戸君くらいだよ」
 「だって、ちゃんと真山さん持ってったもん」
 「何を?」
 「柴田の荷物」
 「「「あ」」」

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