(2003/7/22)

 「はあ、禁断の愛、それには幾多の悲劇と無常。それでもやっぱり愛。merveilleux!(傑作です!)」
 「お前何読んでんだよ、遊んでんじゃねえよ。お前の好きな書類書きは?」
 「休憩中です。これはUne Page d'amourですよ、Zola Émileの本です」
 「なんだって?」
 「ゾラですよ、フランスの作家エミール・ゾラ」
 「名前くらい知ってるよ、『居酒屋』とか書いた奴。受験の時しょうがなく覚えたねー」
 「彼の珍しい恋愛物語なんですこれ、『愛の一ページ』」
 「知らないから」
 「そうですか。おもしろいのになあ」
 「お前なんでそんなフランスに傾倒しちゃってんの?トレヴィアーンとかエクセレントーとか」
 「ええと、ステキじゃないですか?人類初の自我革命とも言えるフランス革命に始まり劇的な政治変化…そしてその中で恐らく燃え盛っただろう秘密の恋、逃避行、女性の目覚め!」
 「最後のほう関係無いの混じってるよねお前の場合、希望じゃん自分の」
 「それもありますけど…って興味ないなら返してください、読んでる途中なんです」
 「げ、これ翻訳されて無い原文そのままじゃん」
 「はあ」
 「イヤミな女だねー。サラダ記念日読んでろよ、俵さん」
 「今はチョコレート革命なんです」
 「あっそ」
 「て、だから返して下さい!」
 「何恥ずかしがってんの、今更だよお前。別にいいじゃん俺読めないんだし」
 「そうなんですか?」
 「俺フランス語専攻してねーもん」
 「私もしてませんけど」
 「うわ益々イヤミ。っていうかさ、そんな女には来ないね」
 「何がですか?」
 「旦那様」
 「C’est pas possible!(そんな!)」
 「そりゃそうでしょ、来ないよ」
 「何故ですか!?」
 「自分の奥様がやれワンダフルとかC’est pas possible!とか、怖えもん」
 「Mon Dieu…!(嗚呼なんてこと…!)」
 「だからそれやめろって言ってんの」
 「そんな…どうしてくれるんですか真山さん!うう…」
 「俺のせいじゃ無いじゃん。何泣いてんの?馬鹿じゃない?」
 「馬鹿じゃないです」
 「ウゼえないちいち泣くなそんな事で、馬鹿」
 「そんな事…」
 「うるせえな。言葉のアヤ、反応しすぎ」
 「だって真山さんがお嫁に行けないって言うから」
 「面倒臭えー、んじゃ旦那様にそういうの平気な奴選べよ」
 「え」
 「お前がブリリアントで失神でも怖えって言わない奴くらい…まあ、45億人くらいは野郎だしね、少しはいるんじゃない、マニアが。海外も視野にいれてね」
 「…なるほど!Magnifique!(素晴らしい!)」
 「…だから…もういいや。で?その旦那は何、どうしてくれんのお前に」
 「ええとー…ええ?そんな、口に出すなんて、いえ、そんな…」
 「だから、何俺相手に恥らってんの。気持ち悪ィから」
 「…き、…そうですね、優しく!!愛を語らってくれたりしますよ」
 「…なんか意図感じたけどまあいいよ、フランス語で?」
 「それもいいですねー、J’ai tant d’amour à te donner(僕は君への愛でいっぱいだよ)とかbien-aime'e!(最愛の人よ!)とか toujours avec vous(ずっと一緒にいよう)とか 」
 「Superbe(そりゃーようございましたね〜、ホント素晴らしいね〜)」
 「いいじゃないですか、別に真山さんに言ってくれなんて頼んでないんですから」
 「Ah bon?(あっそ?)」
 「ウフフフ、そうです。う〜ん、Je vous jure un amour toute ma vie(生涯の愛を誓うよ)とか」
 「ふーん?ma cherie(僕の愛しいひと)とかJ'aime Jun toujours(僕は純を愛し続ける)とか」
 「ああ、それこそエクセレント!素敵ですよねえ」
 「そーね、良かったね、一生言ってて」
 「はい、Merci(ありがとうございます)」
 「Je vous en prie(どーいたしまして)」
 「ねー真山くん、この書類目を通してもらえる?上からの催促があってね、今日中には持って行かないと」
 「げ。柴田なんかと遊んでる場合じゃないじゃん、どれですか」
 「うん、これなんだけどさあ…」
 「はあ、トレヴィアン…」
 「…柴田、柴田」
 「ワンダフルー」
 「柴田、戻ってきいや!ホンマ危ないなあ」
 「え、彩さん」
 「あんたさっきから何ブツブツ言ってるん?何語?真山さんと何話してたん?アーボーなんとかとか」
 「え?ええとですから愛の…真山さん?」
 「柴田?ちょ、まだ話終わって無いんやけど。無視かい」
 「真山さん?」
 「何、邪魔、お前と違って俺は仕事してんの。あっち行けよ、木戸が泣いてるよ〜」
 「…図りましたね?]
 「なんすかこの文面、読むこと想定して無い責任逃れる為に入れとく注意書きみたいじゃん。面倒臭えー」
 「最初から分かってましたね?面白がってましたね?笑ってましたね?」
 「あー、Je suis fatigue…(疲れた…)」
 「真山さん!」

/back